大沢(1995b)はある地域の森林の多様性を保全するためには、一個の森林が単独で保護されることだけでは十分でないと述べている。これはある地域の森林は相互に住み分けながら多様な生育地の中で共存しており、傾度的に変化する環境の中では、相互の関係の中で個々の森林も維持されているからである。Keddy(1990)は遠心的群落配置(Centrifugal Community Organization)と呼ばれる生態学的モデルを用いて、湿性立地での群落傾度に沿った植物種の住み分けのパターンを明快に図示している。このように今後は湿原の再生(大窪1996)や、地域多様性の保全のためには単純に特定の種や地域を保護するといった意識だけでなく、生態学的理論に基づいて、地域の時空間的な群落な変化を保証するような方法が工夫される必要があるだろう。